中小企業(零細企業)の経営を改善する3つのポイント

「社長、このままの業績だと、これ以上の融資は難しいです・・・。」

取引金融機関の担当者に言われました。

「たしかに、この決算のままではマズいな。」

「よし! 経営改善に取り組もう!」

「でも、何をどうすれば良いか、分からない・・・。」

このような中小企業の経営者、経理担当者もいらっしゃると思います。

ここでは、中小企業金融に20年以上従事し、多くの自営業者・中小零細企業の経営を見てきた中小企業診断士である私(うめさん)が、経営を改善するポイントを説明します。

それは以下の3つです。

  1. 管理会計で、自社を「見える化」する
  2. 「売上は方程式である」を理解し、実践する
  3. 取引金融機関への説明力を磨き、借入力を高める

当ホームページでは、自営業者~小規模企業者(零細企業)向けの情報を提供しています。

業種にもよりますが、売上規模でいうと0円~年商10億円というところでしょうか。


※「零細企業」という言い方は、マイナスイメージがあり、好きではないのですが、便宜上お許しいただければと思います。

管理会計で自社を「見える化」する

「社長、先月の業績は良かったですか?悪かったですか?」
この質問にきちんと回答できる経営者は、実際のところ多くはありません。


よくある回答は以下のとおりです。
・売上が〇〇〇〇円であったから、良かった。
(→利益が把握できていない)

・税理士からまだ試算表が届いていないので分からない。
(→税理士まかせ)

・試算表でマイナスが出ているので、悪かった。
(→試算表は現金主義(お金の流れ)で作成される場合も多いため、それだけでは良し悪しは判断しにくい。例えば、仕入れが多い月はマイナスになるなど。)

自社の状況を把握するのに必要なのが、「管理会計」です。

管理会計とは、一般的な会計(財務会計)とは異なります。

〇財務会計・・・決算書を作るために、収入・支出を把握し仕訳する。

〇管理会計・・・自社の経営のために、重要だと思う項目を把握し管理する。



ここであえて、「重要だと思う」というあいまいな言い方をしました。

それは、どの項目を選び、どのように管理するかは決まりがあるわけではなく、自由だからです。

管理会計の例としては、以下のとおりです。

<ラーメン店の場合>

当店では、原価率・家賃・正社員人件費・水道光熱費・〇〇・△△は固定的である。

上記の支出は「固定的支出」として、特段の管理をしない。

当店では、以下を目標とする。
・売上・・・月3,000千円以上

・アルバイト人件費・・・月200千円以下

・「スポット的支出」(固定的支出以外の支出)・・・月200千円以下

<木造建築工事業の場合>

当社は下請であり、元請先から十分な受注を確保できる。

当社のキーポイントは、いかに建築工事のでき高を増やすかである。

当月の出来高
=各工事の受注額×その工事の当月進捗増加率
=A工事(受注額15,000千円×当月進捗増加率30%=出来高4,500千円)
+B工事(受注額20,000千円×当月進捗増加率40%=出来高8,000千円)
+C工事・・・・
=月25,000千円以上の出来高となれば良しとする。

なお、進捗率は概算でOK
(例えば、A工事は屋根工事までいけば40%とみなしているが、まだそこまで至らないので、現在の進捗率は30%とみなす、など。)

<アパレルショップの場合>

当店は多種多様な商品を取り扱っている量販的店舗である。

商品別の粗利益額を正確に把握するのは困難である。

商品を以下のように分ける。(分け方は、担当者の感覚でOK)
A群(花形商品 平均粗利益40%)
B群(標準商品 平均粗利益25%)
C群(値下商品 平均粗利益10%)

それぞれの商品群の売上合計に平均粗利益率を掛け算して、推定の粗利益額を計算する。

推定の粗利益額の合計が、固定費(月約4,000千円)を上回っていれば黒字とみなす。

おおまかではありますが、自社の状況をリアルタイムで確認できます。

管理会計によって、自社の状況を「見える化」できるわけです。

状況が良くないことが分かれば、経営者はなんらかの手を打つことができます。

決算書が出来上がってから「あれ? 赤字だ!」では遅いのです。

「売上は方程式である」を理解し、実践する

街の定食屋さんに尋ねます。

「お店のホームページはありますか?」
「そんなものないよ、そんなもの作っても誰も見ないでしょ?」

いえいえ、そんなことはありません。

「AISAS(アイサス)」モデルというものがあります。

これは消費者の購買行動のプロセスを分析したものです。

AISAS(アイサス)

1 Attention(注意) グーグルマップ等でお店を知る

2 Interest(関心) お店の情報を見る(写真・星評価)

3 Search(検索) お店について詳しく情報を確認する(口コミ・ホームページ等)

4 Action(行動) お店に行く

5 Share(共有) 口コミ、発信する



ホームページを作ることにより、お店の情報発信を充実させることができます。

AISAS(アイサス)の中でいうと、「Search(検索)」を強化できます。

仮に、ホームページを作ることにより、一日あたり1人の新規客が増加するものとします。
(1人/日に、具体的な根拠はありません。0.5人/日かもしれません。でも、決して無理のない数字ですよね?)

新規客の増加により、年間売上は以下のように増加します。

客単価900円×1人/日×300日/年=年間270,000円の増加


売上の増加はこれだけではありません。

新規客(年300人)のうち、10%(30人)が、月1回程度来てくれる常連さんになったとします。
すると以下の売上がさらに加わります。

客単価900円×30人/月×12か月=年間324,000円の増加

しかも、これらの売上増加は(基本的に)翌年以降も続きます。

ホームページを作るだけで、これだけの効果があるとすれば、スゴイことだと思いませんか?



もっと言うと、以下の取り組みによりさらに売上を増加させることができます。

・メニューを工夫することにより、客単価を900→1,000円へUPさせる。

・ホームページをさらに充実させることにより、新規客増加を1人/日→2人/日へUPさせる。

・接客、サービスを改善することにより、常連化率を10%→20%へUPさせる。



全ての取り組みの合計が売上となります。「売上は方程式」なのです。

取引金融機関への説明力を磨き、借入力を高める

資金繰りは、企業維持の生命線です。

会社が黒字であっても、資金繰りがうまくいかなければ倒産しています。

多くの場合、金融機関からの借入で資金調達を行います。

取引金融機関への説明力を磨き、借入力(資金調達力)を高めることが重要です。

以下、取引金融機関に融資の申し込みをしたケースを考えてみたいと思います。


金属の切削加工を行う法人でのケースです。

これまでの不振理由を取引金融機関の担当者にきかれます。

「病休者がいたので」

「一部機械が故障したので」

「予定していた受注がキャンセルになったので」

いろいろと説明しますが、言い訳を言っているみたいに思われてしまうかもしれません。

でも、例えば、以下のような「生産管理表」があれば、説得力を持って説明できますね。

生産管理表 生産個数
3 4 5 6 7 8 9 10
部品名 単価  
部品A 160円   777 0 0     0 0 0
部品B 210円   761 250 580     0 0 0
部品C 320円   0 312 666     250 0 0
部品D 110円   0 0 0     250 879 846
部品E 250円 キャンセル 0 0 0     0 0 0
        病休者有       機械故障    
    でき高 284千円 152千円 335千円     108千円 97千円 93千円

「生産管理表」があれば、日々の生産管理(≒売上管理)ができます。

前項で説明した「自社の見える化」にもつながります。


また、「今後の受注の見通しはどうですか?」と取引金融機関担当者に聞かれたとします。

「今後は、A社から〇〇〇、B社から△△△という受注がありまして・・・」

口だけで言っても分かりにくいです。

金融機関の担当者も、書類を作成するに困ってしまいます。

以下のような「営業管理表」があれば、その担当者も融資課長に報告しやすいです。

営業管理表
取引先名 製品名 商談開始日 見込単価 見込売上 状況 受注確度 備考
株式会社A a-10 4月10日 160円 320千円     受注済(4月25日)
  a-20 4月10日 250円 250千円     失注
  a-30 5月20日 180円 540千円 金額交渉中 A  
株式会社B b-10 4月25日 300円 450千円     失注
  b-20 5月18日 350円 350千円     受注済(5月31日)
  b-30 6月4日 300円 750千円 見積提示中 B  
株式会社C c-10 4月30日 100円 500千円 金額交渉中 B  
  c-20 5月25日 90円 450千円     受注済(5月31日)
  c-30 6月7日 120円 360千円 見積提示中 C  


担当者が融資のりん議を通しやすいように、材料を提供してあげましょう。

担当者に言われなくても、自発的に書類を提出しましょう。


金融機関担当者も多忙であり、担当先を何社も抱えています。

担当者が自社のためにどれだけ時間を割いてくれるかは分かりません。

また、その担当者の審査能力や書類作成能力もさまざまです。

これらの「生産管理表」「営業管理表」があるかないかで、融資の可否が分かれる可能性も少なくありません。

取引金融機関への説明力を磨き、借入力(資金調達力)を高めましょう。

最後に

あらためて、経営を改善する3つのポイントを見てきました。

1. 管理会計で、自社を「見える化」する
2. 「売上は方程式である」を理解し、実践する
3. 取引金融機関への説明力を磨き、借入力を高める

インターネット上では、経営改善についてたくさんの情報があります。

経営改善に関する書籍を本屋で見ると、そのたくさんの量に頭がクラクラしてしまいます。

経営コンサルタントを名乗る人も、山ほどいます。

経営改善に取り組むにあたり、何を選び、どのように取り組んでいくか。

それを決定する上での一助になり、お役に立てればうれしいと思っています。

本ホームーページでは、この3つのポイントを中心として、中小企業の経営者、経理担当者のみなさまにお役にたてるような情報を発信していきます。

また、税理士事務所・会計事務所の担当者、金融機関担当者にも、役立てていただければと思います。

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